12歳アイドルが番組でヘリウムガスを吸引して意識障害のその後

12歳のアイドル(当時は小学生)がテレビのバラエティでヘリウムガスを吸引して脳の空気塞栓症になったという話。

その後、どうなったか気になっていましたが、続報が日本小児科学会から発表されました。

残念ながら、彼女には脳の高次機能障害が残るかもしれないというお話です。

(その後、ニュースで報道されて(2015年7月10日)、元気に復帰しているそうです。後遺障害もないということ、なんですね?よかったです!\(^o^)/)

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圧縮されたガスを一気に吸うと肺が破裂、気胸や縦隔気腫を起こす

 

この事件は2015年の2月3日ごろに報道されました。

ももいろクローバーZの妹分のアイドル集団が、バラエティ番組の収録中に起こった事件です。

このブログでも2月4日に記事を書きました。

 

⇒ ヘリウムなど圧縮されたガスを吸うと肺から空気が入り空気塞栓症を起こす

http://kanbe.info/1025.html

 

この時に報道された内容には、事件の詳細は記載されていませんでした。

「声を変えるヘリウムガスを思い切り吸ったアイドルが意識を失って倒れて救急搬送、空気塞栓症らしいことが分かった。」

という程度の話でした。

 

しかしその内容から、

高気圧のガスを一気に吸ったことによる気圧外傷(肺胞破裂)ではないか?

そのときにガスの一部は破れた血管から中に入っていって、一気に脳まで飛んだのではないか?

と、想像できたのでその内容を説明しました。

 

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その後、詳細が発表されてみるとほぼ、想像どおりでした。

小児科学会からの詳細な報告は以下のページで読めます。

http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/injuryalert/0053.pdf

 

次の章からは、それについて説明してみます。

 

 

 

ヘリウムでロシアンルーレットごっこのはずが本当のデスゲームに

 

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事故が起こった時の収録内容は以下のようなものです。

これは小児科学会の報告からの抜粋です。

 

「番組の共演者と合わせて 5 人で横に整列。正面にテーブルがあり、ヘリウムガス入りのスプレー缶(容量は 5,000cc、一回用)が 5 つ置かれていた。ガスが充填されたものは1 本のみであり、残りの 4 本は事前にガスを抜き切った空のスプレー缶。5 人で同時にガスを吸い、一人の声が変わるという、ロシアンルーレットのようなゲームをやっていた。」

 

バラエティではよくありますよね。

くじ引きで負けた人がひどい目に合うというもの。

出川哲郎さんとか、ダチョウ倶楽部の上島さんとか、ひどい目にあった時のリアクションで売れている人も大人の芸人さんにはいます。

 

でも、被害にあった子は12歳の小学生の女の子でした。

 

アイドルするぐらいですから、どちらかというと華奢な女の子だったと思われます。

身長と体重と年齢から、肺活量は2600㏄ぐらいしかないと考えられています。

この子に5000㏄ものヘリウムガスを吸わせた。

しかも・・・

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「2015年1月28日18時ごろ、やり直しのゲームのとき、事故が発生した。本人はテーブルに置かれたヘリウムガス入りスプレー缶を右手に持ち、左手で鼻をつまみ、司会者の合図で口にくわえて吸引した。4秒ほどして缶を口から離した直後から右手を震わせ始め、約 5 秒後に後方へ卒倒した。受け身は取れずに後頭部を強打し、全身性強直性間代性けいれんを起こした。速やかに救急要請された。」

 

肺活量の倍の量のヘリウムガスを高圧で一気に吸い込んだわけです。

2600㏄でパンパンになる風船に、5000㏄のヘリウムガスを一気に吹き込んだわけです、破裂するのが当たり前です。

少女は司会者に言われるままに、鼻をふさいで一気に吸って、

 

・・・わずか4秒で吸うのをやめた。

その直後に右手の痙攣が始まっています。

5秒後には転倒して激しい癲癇様の症状です。

 

この激烈さからすると、

かなり激烈な気圧外傷が一気に発生し、しかもそれによる肺の損傷はかなり広範囲で、一気に大量のガスが血管内に入ったのではないか?

5秒後には意識を失うような脳への血流の途絶が瞬間的に起こったのではないか?

(脳そのものというよりは脳に上がっていく頸動脈などに大きな気泡があったのでは?)

そう思わずにはいられません。

 

 

空気塞栓症の治療に効果的なのは高圧酸素治療を直ちに始めること

 

たらればを言っても仕方ないのですが、空気塞栓を起こして12時間以内に高圧酸素治療を受けていればと思いました・・・

 

このような高圧ガス吸引による空気塞栓症ではどのような治療がなされるべきか?

12歳のアイドルは発症後6日目(2月3日)に空気塞栓症ではないかと診断されて、高圧酸素治療を受けることができました。

 

でも、残念ながら、2月5日の段階の判断では

「2015 年 2 月 5 日現在,追加の高圧酸素療法を行っているが,高次脳機能障害を残す可能性があると判断されており,早期のリハビリ介入が検討されている。」

となっています。

 

この治療開始は遅きに失したものです。

12時間以内に高圧酸素療法が開始されていれば高度機能障害が起こる可能性は低くなったかもしれないのです。

http://www.hboorcca.com/pdf/information/Chp%2011%20Cerebral%20Air%20Embolism.pdf

 

残念ながらこのケースではヘリウム吸引による脳空気塞栓症の可能性に気づかれたのが症状が増悪した受傷後6日目であり、その時点での画像診断ではすでに脳に空気塞栓による器質的な変化が広範囲に発生していることが確認されています。

ひらたくいうと、脳細胞の変性が広範囲に発生していた、ということです。

だから脳機能障害が残る可能性が高い。

 

もちろん、高圧酸素療法を施していれば治療が成功したという保証はありません。

しかし、ヘリウムガスによる空気塞栓症の治療の比較では、高圧酸素療法以外の治療群での死亡率は30%、高圧酸素療法による治療を速やかに開始した患者では死亡率が14%となっています。

 

ということは、12時間以内に高圧酸素療法を開始できていれば、改善した可能性は2倍ぐらい高かった、ということになります。

もちろん、半数では治療しても効果が得られなかった可能性があります。

それでもなお、患者お呼び患者家族からすれば12時間以内に高圧酸素療法を受けることができていれば、と、悔やまれたことでしょう。

 

このことに関しては別の記事にします。

⇒ 12歳少女のヘリウムガスによる空気塞栓症の診断はなぜ遅れたのか

 

追記

その後、2015年7月10日にニュースで、少女は回復して普通の生活に戻っているとの報道を見ました。

よかったです!

二度とこういうことが起こりませんように!

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12歳アイドルが番組でヘリウムガスを吸引して意識障害のその後」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 12歳少女のヘリウムガスによる空気塞栓症の診断はなぜ遅れたのか | 官兵衛の覚え書き

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