デング熱 蚊から蚊へうつる 厚生労働省は否定するけど

デング熱ウイルスに感染したヒトスジシマカに刺されても、症状がでない人が50~80%です。

症状が出た人でも、高熱の出ない症状の軽い人もいます。

そうすると、現在見つかっている100人弱の10倍、1000人ぐらいは感染者がいたんじゃないかと思われます。

 

たった一人の患者から拡大したと考えられる今回のデング熱ウイルス感染。

ほんとうに、ヒト→蚊→ヒトの感染経路だけで増幅したのでしょうか?

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デング熱ウイルスは蚊のメスからその卵に伝播する

 

実は、デング熱ウイルスは垂直感染と言って、メスの蚊からその卵や幼虫に伝染することが知られています。

これを一番はっきりと伝えてくれるのは、オスの蚊の感染です。

インドやブラジルなどの流行地において、デング熱を感染させるネッタイシマカやヒトスジシマカのオスを捕まえて調べてみると、一定の確率でデング熱ウイルスに感染していることが確認されるのです。

 

Dengue06

Wikipediaより、デング熱の流行地

 

ご存知のように、蚊で、血を吸うのはメスだけです。

つまり、オスの蚊はデング熱に感染した人や猿に接触することはあり得ませんから、これは母親から伝えられたとしか考えられません。

 

さらに、複数の研究者が様々な調査をして報告しています。

ウイルスの遺伝子を調べてみると、ある程度の確率で、野生で採取した卵やボウフラにデング熱ウイルスの遺伝子が存在します。

それらの蚊を実験室内で孵化させて、成虫の体を調べてみるとあきらかにデング熱ウイルスの増幅を示す抗原抗体反応が確認できるというのです。

その感染陽性の蚊の体液を実験動物に注入するとデング熱ウイルスが増幅し、ウイルス感染症が発症するというのですね。

 

これらのことから、熱帯や亜熱帯のデング熱ウイルス流行地においては、デング熱の流行のあまり見られない気温の低い乾燥した時期(乾季)には、ウイルスは蚊の卵の中に潜んでいるのではないかと考えられています。

メスの蚊が産卵するような気温になり、雨が増えてボウフラが繁殖できる水たまりが増えてくると、卵がかえり、蚊となって吸血に出てきます。

そのときに、一部の蚊は生まれながらにウイルスを持っているので、再び媒介するのではないかと考えられています。

 

参考文献

Braz J Biol. 2009 Feb;69(1):123-7.
Natural vertical transmission by Stegomyia albopicta as dengue vector in Brazil.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19347154

Epidemics. 2010 Mar;2(1):1-10. doi: 10.1016/j.epidem.2010.01.001. Epub 2010 Jan 22.
How important is vertical transmission in mosquitoes for the persistence of dengue? Insights from a mathematical model.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21352772

J Vector Borne Dis. 2008 Mar;45(1):56-9.
Distribution and seasonality of vertically transmitted dengue viruses in Aedes mosquitoes in arid and semi-arid areas of Rajasthan, India.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18399318

 

 

 

厚生労働省は蚊の親から卵やボウフラへのウイルス感染を否定したい?

 

厚生労働省では今回の流行前の2014年7月に、デング熱がもしも日本国内で流行した場合にどうするかのマニュアルを、すでにまとめていました。

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10906000-Kenkoukyoku-Kekkakukansenshouka/0000055601.pdf

 

その中では、以下のように記述されています。

「媒介蚊対策を決定する上で、デング熱は、ウイルス血症にある人を刺した蚊が感染性を獲得したのちに人を刺咬して感染が成立する、「ヒト―蚊―ヒト」のサイクルをとり、「ヒト―ヒト」の感染と「蚊―蚊」の感染(経卵感染 注4)の例はないこと、・・・中略・・・を理解しておくことが必要である。

注4
ネッタイシマカやヒトスジシマカの卵や幼虫からデングウイルスの遺伝子が検出された例(経卵感染)はあるが、経卵感染によってデングウイルスが次世代成虫に伝播し、さらに経卵感染した蚊がデングウイルスをヒトへ伝播できる可能性は自然界においては低いと考えられる。」

 

厚生労働省としては、「蚊から蚊へウイルスが伝わることはない」というスタンスのようです。

これは9月10日の深夜に見たNHKの報道特集の再放送でも責任者がそう言っていました。

微妙に言葉を濁していましたけど(笑)。

 

インドやブラジルなど、熱帯の流行地の科学先進国から複数の報告があるのに、どうして「蚊から蚊への垂直感染はない」ことにしたいのでしょうか?

いくつかの可能性があるので、考察してみます。

 

 

日本にいるすべての蚊を殺してしまえ!と言われても、無理。

 

ひとつには、パニックを小さくしたいというのがあると思います。

蚊から蚊に伝わるということがあると知れ渡ると、すべての蚊を駆除しろと騒ぎ出す人が少なからず出てきます。

 

実際に、かつて日本国内でマラリアを媒介していたハマダラカという種の蚊は、ほぼ撲滅されました。

平清盛の死因も、記述内容から三日熱マラリアだったのではないかと言われていますが、古くから日本においても風土病の一つであったマラリアの撲滅には成功しているわけです。

ハマダラカの駆除という方法で。

 

ところが、今回問題となっているヒトスジシマカ。

これはハマダラカを駆除したようには駆除できません。

 

これはなかなかしぶとい、生命力の強い昆虫なのです。

卵が乾燥と低温に強いために、夏の終わりに産み付けられた水たまりが干上がっても、次の年の初夏に雨が降れば、そこからボウフラになり、蚊となって飛び立つことができるのです。

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この逞しさを使い、東南アジア生まれで、西日本にも昔からたくさん生息していたのですが、これが今では世界中に拡散しています。

(アメリカにいるヒトスジシマカは、日本から輸出された廃材にへばりついていた卵から孵化して広まったことが確認されています。)

 

こういう生命力の強い蚊を撲滅しようとすると、かなり高濃度の殺虫剤をありとあらゆるところにまきちらし、水の中や、水溜まりであったところも化学薬品+熱湯処理などで卵まで含めて殺す必要が出てきます。

そうすると、蚊どころか、生態系すべてを破壊するほどの作業をせざるを得なくなる。

蚊だけでなく、ほとんどすべての昆虫や土壌に住む節足動物を殺してしまいます。

 

すると、生態環境が壊れ果ててしまいます。

たとえば鳥やネズミなどが死んでもそれを分解して土に返してくれる生物の数が格段に減り、かえって衛生環境は悪くなります。

そんな環境には人間だって住めなくなります。

(別の病気が発生する可能性が出てきます。)

 

「ヒトスジシマカを撲滅しろ!」

と、大騒ぎになることを避けるためにも、

「デング熱は蚊から蚊へは受け継がれません。」

ということにしておきたいのでしょうかね。

 

参考文献

PLoS Negl Trop Dis. 2010 May 25;4(5):e646. doi: 10.1371/journal.pntd.0000646.
Consequences of the expanding global distribution of Aedes albopictus for dengue virus transmission.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20520794

 

 

 

日本の環境だと、ウイルスは冬をまたいで広がったことはない

 

もうひとつは、日本におけるデング熱感染を我々は戦後すぐに経験していて、それが一過性であることを知っているからです。

第二次大戦中に、東南アジアで戦っている人たちが負傷して帰ってきて、デング熱を発症する。

戦後も帰還兵がデング熱を発症するということで、日本中で何十万人もの感染者が出ました。

しかしそれは、戦後数年で日本から消えていったのです。

だから日本では、デング熱ウイルスが越冬して伝わる可能性はない、そう考えられているのですね。

 

実際に、日本だけでなく、ハワイやセーシェル諸島、かつての台湾など、デング熱の一過性の流行を見て沈静化した国や地域はたくさんあります。

それらの地域でも、流行を媒介したのはヒトスジシマカであると考えられています。

 

温帯に適応したヒトスジシマカは、どうやら、温帯の冬場を越せるほどのウイルス粒子を自分たちの卵に譲り渡すことはできないようだ、ということです。

熱帯や亜熱帯のヒトスジシマカとはちょっと違うようだということですね。

1280px-Aedes_albopictus_on_human_skin

 

さらに、熱帯や亜熱帯において、効率よくデング熱ウイルスを伝播していくのはネッタイシマカの方で、ヒトスジシマカは、ヒトへウイルスを感染させる能力は低いと考えられています。

 

たとえば、ネッタイシマカもヒトスジシマカも、どちらも感染している人や猿の血液を吸ってその消化管上皮にウイルスが感染するのは同じです。

ですが、唾液腺上皮への移行はネッタイシマカにおいては活発だけど、ヒトスジシマカでは比較的弱いことがわかっています。

ヒトスジシマカに1回や2回刺されても、感染が成立しにくいのです。

 

 

このように、

1.これまで日本でデング熱ウイルスが蚊から蚊へと越冬して受け継がれたことはない。

2.ヒトスジシマカのウイルス媒介能力は高くない。

の理由から、日本においては蚊から蚊へのウイルスの受け渡しはないと考えてよい、厚生労働省としてはそうしておこうと考えている節があります。

 

 

 

だけど、今回、感染拡大し過ぎじゃないの???

 

だけど、だけどですよ。 (←しつこい(;^ω^))

 

今回の代々木公園から広がったデング熱ウイルス、遺伝子型を探る限り、一人の感染者から始まった同じウイルスだとわかっています。

冒頭にあげたように、100人が発症したと報告し、実際には1000人ぐらいが感染したんじゃないかと思われます。

 

ならば、代々木公園には少なくとも数千匹の感染したヒトスジシマカがいたはずです。

そして最初の発症者が8月中旬なので、1か月以内にすべての感染拡大が起こったと思われます。

 

この夏に、たった一人の人を刺した蚊が、次に代々木公園に来た別の人を刺し、そしてその新たに感染した人たちの中で増幅したデング熱ウイルスを別の蚊が刺したとして、、、

その数が数千匹に到達するのに、そんなに短い期間で到達可能なのでしょうか?

その考えは、かなり無理があるんじゃないでしょうか?

 

でも、メスの蚊からその卵への垂直感染によるウイルス感染蚊の拡大が起こっていれば、この数字は十分ありうると思われるのですよね。

ということで私の推測。

 

この夏、代々木公園のヒトスジシマカの間では、メスの蚊から卵へのデング熱の垂直感染が起こっていた。

だけど、過去の事例から考えると、その伝染が冬を超えて来年に持ち越される可能性は低いだろう。

だから、本当は違うかもだけど、とりあえず、蚊から蚊にはうつらない、ということにしておこう、、、冬をまたげば本当だし。 ( `ー´)ノ

 

そう考えてるんじゃないですかね、厚生労働省の担当者の方も本当は。

 

これはあくまでも私の推測ですから、厚生労働省に抗議の電話かけないでくださいねえ(笑)。

 

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デング熱 蚊から蚊へうつる 厚生労働省は否定するけど」への4件のフィードバック

  1. デング熱

    直接感染したって主張する割に2015年の国内感染は無かった訳ですがどうお考えですか?

    返信
    1. crokan 投稿作成者

      えーっと、あなたの書いてらっしゃる日本語の意味がよくわかりません。何をどう質問なさりたいのか、もう少し日本語としてわかるように書いていただけますと返信できるかと思います。もしかして外国の方でしょうかね?
      深読みして、「蚊から蚊へ直接移るというのなら今年も流行るはずだろう、それをどう言い訳するのだ?」ということでしょうか?
      だとすると、私の記事を最初から最後まできちんと読んでいただければ答えはきちんと書いてございますよ~ん。

      返信
  2. ピンバック: 刺された ヒトスジシマカ @横浜 ぱちん! まだ刺さってる!(泣) | 官兵衛の覚え書き

  3. ピンバック: デング熱は野良猫にもネズミにも感染しません、ヒトと一部の蚊だけです | 官兵衛の覚え書き

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