スギ花粉症がトマトで悪化する?口腔アレルギー症候群(OAS)との関係

スギ花粉症はスギの花粉に対する過剰な免疫反応が、痒みやくしゃみ、涙や鼻水を引き起こす病気です。

花粉を排除すべき敵だとみなしてあなたの体の免疫系が反応してしまうのですね。

意外な話で、スギ花粉症になった人の中には、それが原因でトマトが食べられなくなる人がいるという話もありますが、本当なのでしょうか?

 

スポンサードリンク

 

 

スギ花粉症のくしゃみや涙は免疫系がスギ花粉を寄生虫だと勘違いしたため

 

スギ花粉症の季節になると、くしゃみや鼻水、涙に悩む人が大勢います。

日本人の全人口の10~20%がスギ花粉症だといわれますけど、予備軍はもっとたくさんいると考えられています。

 

というのも、日本人の70%ぐらいは、スギ花粉に対してIgEという免疫グロブリンを作っているからです。

免疫グロブリンというのは、我々の体の中のリンパ球という白血球が作る物質です。

 

この物質は、自分の体の成分とは異なる異物を認識して、くっつきます。

免疫グロブリンがくっついた物質は、他の免疫細胞から「明らかな異物」と判断されるので、補足されて食べられて分解されます。

 

また、ウイルスなどの場合はウイルス粒子に対する免疫グロブリンが、それを発現している細胞にくっつくので、それらの細胞攻撃されます。

(ウイルスに感染した細胞を細胞ごと破壊して感染拡大を防ぐためです、江戸時代の火消みたいなもんです。)

 

IgEという種類の免疫グロブリンは、ダニやカイチュウなどの寄生虫を認識する免疫グロブリンです。

このIgEは、寄生虫が体内に入ってくるとその成分にくっついて団子になります。

これによって粘膜の下にいる「肥満細胞」という白血球を刺激します。

 

IgEで刺激された肥満細胞はヒスタミンなどのかゆみ物質などを放出するので、そこが痒くなります。

ダニや蚊に刺されるとそこが痒くなるというわけです。

これにより、食いついているダニの存在がわかり、しかも痒いから掻くという行為で、ダニを掻き落とすことができるわけです。

Madani

“Madani”. Licensed under GFDL via Wikipedia – http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Madani.jpg#mediaviewer/File:Madani.jpg

 

消化管粘膜の下にいる肥満細胞がIgEで刺激されるとやはりいろんな物質を放出します。

これは下痢や嘔吐につながります。

消化管内に入ってきたカイチュウやサナダムシなどの寄生虫を、そこに居つかせないようにするために、消化管の内容物ごと、一気に外に出してしまえという反応ですね。

 

スギ花粉症の人では、免疫系が目や鼻に入るスギ花粉をダニやカイチュウの成分だと勘違いしてしまっています。

それでスギ花粉特異的なIgEを産生する、それが肥満細胞を刺激して、花粉症の諸症状が出るというわけです。

 

 

 

スギ花粉症がトマトで症状がひどくなるという報告 2001年以降

 

症例数は少ないのですが、スギ花粉症の人がトマトを食べると花粉症の症状がひどくなるという症例が2001年に初めて学会報告されました。

 

640px-Tomatoes-on-the-bush

“Tomatoes-on-the-bush”. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ – http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tomatoes-on-the-bush.jpg#mediaviewer/File:Tomatoes-on-the-bush.jpg

 

トマト果実による口腔アレルギー症候群におけるトマト果実とスギ花粉の共通アレルゲン性の検等.

徳田玲子,近藤康人,川口博史,他:

小児科臨床 2001 ; 54 : 25―30.

 

これは生のトマトのケースです。

その後、花粉症の犬などでの動物実験でも花粉症の動物がトマトの成分に反応してアレルギー反応を起こすことが確認されています。

 

Oral allergy syndrome induced by tomato in a dog with Japanese cedar (Cryptomeria japonica) pollinosis.

Fujimura M, Ohmori K, Masuda K, Tsujimoto H, Sakaguchi M.

J Vet Med Sci. 2002 Nov;64(11):1069-70.

 

その他にも、トマトジュースでのケースも報告されています。

 

スギ花粉飛散期に呼吸困難で発症したトマトジュースによる
口腔アレルギー症候群の 1 例

川本 仁,山肩 満徳,中島 英勝,神辺 真之,倉岡 敏彦

日呼吸会誌 41(6),2003, 39-

 

トマトジュースも加熱しないものが多いので、生のトマトを食べた場合と同じ反応が起こると考えられています。

このように、21世紀に入ってから急に、スギ花粉症の人がトマトを食べたときの危険性が認識されるようになってきました。

スギ花粉へのアレルギーの人がトマトアレルギーを発症する、みたいなイメージです。

 

 

 

スギ花粉症、シラカバ花粉症と口腔アレルギー症候群(OAS)

 

スギ花粉症とトマトアレルギーが交差すると、どのような症状になるのでしょうか?

ひとつは、スギ花粉症に悩まされている人が、生のトマトを食べたり、加熱していないトマトジュースを飲むと、花粉症の症状がひどくなるケース。

もうひとつは、花粉症の症状は出ないけれども、トマトを食べると唇や舌がしびれて腫れあがり、症状が強い人は呼吸困難に陥ることもあるというケース。

これらは、スギ花粉がアレルゲンとなった口腔アレルギー症候群(OAS)であると考えられています。

 

口腔アレルギー症候群(OAS)というのはなんでしょうか?

これはその名前の通りで、口の中で下や歯茎、頬粘膜や唇で、食べ物に対してアレルギー反応が起こってそれらの組織が腫れあがるというものです。

粘膜の下の肥満細胞が、食べ物の成分に激しく反応しているのです。

 

スギ花粉症の人ではスギ花粉に対する特異的な免疫グロブリンIgEが産生されます。

実は、この「免疫グロブリンが認識するスギ花粉の構造」が、トマトのタンパクが持つ構造と部分的に似ているのです。

このために、スギ花粉に反応するIgEが、間違えて部分的にトマトに反応してしまうのです。

 

スギ花粉とトマトを取り違えた体の免疫系が、

「寄生虫が口の中に入ってきた、吐き出させるように仕向けなきゃ!」

と、判断して作用してしまうわけですね。

スポンサードリンク

 

これは、実はヨーロッパでは昔からよく知られている現象でした。

日本とは異なり、シラカバ花粉に対する花粉症が多いヨーロッパでは、シラカバ花粉症の人がナシ、モモ、リンゴなどを食べると唇や舌が腫れあがるアレルギー反応がおこることが知られていました。

そこで、シラカバ花粉のアレルギー成分を調べてみたところ、これらの果物の成分とよく似ている部分があることが明らかになったのです。

 

まったく同じことが、スギ花粉とトマトの間に起こることがあるというのですね。

 

ただし、スギ花粉症の人全員がトマトに対して反応するわけではありません。

これはその人のIgEが認識するスギ花粉の形がそれぞれ微妙に異なるからです。

免疫系が認識しているスギ花粉の構造がトマトと似ている部分である場合にはOASが起こるけれども、そうでない人ではOASは起こらないからです。

それは、運不運で決まるとしか言えませんけど。

 

 

 

アレルギーにトマトの成分やトマトリコピンが良いという話は嘘なん?

 

ここで、不思議に思う人も多いと思います。

トマトやトマトの成分であるリコピンを摂取すると、花粉症などのアレルギーのある人がいい感じになる(薬事法上、あいまいに書いてます。)などという話があります。

 

***カゴメのホームページより引用***

トマト由来カロテノイド(主にリコピン)の抗アレルギー作用を臨床試験で確認
-カゴメ、日本薬科大学・おやまにし病院の共同研究-

http://www.kagome.co.jp/research/summary/050929/

カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は日本薬科大学・おやまにし病院(伊藤雅彦先生)との共同研究により、トマト由来カロテノイド(主にリコピン)が抗アレルギー作用を有する可能性があることを臨床試験により明らかにしました。
なお、本研究内容は第55回日本アレルギー学会秋季学術大会(2005年10月20日~22日、盛岡市市民ホール・マリオス・ホテルメトロポリタン)において発表いたしました。

共同研究者 日本薬科大学講師(おやまにし病院副院長)伊藤雅彦先生のコメント

近年、喘息・アトピー性皮膚炎・花粉症に代表されるアレルギー性疾患の増加は現代社会の大きな問題になっております。現在、アレルギー性疾患の主な治療法は表面に現れた症状をおさえる対症療法が主ですが、アレルギーになりにくい体質をつくること(予防)が重要であると考えます。そのためには、食生活を見直すことや腸管免疫の強化が重要です。今回の研究結果は、トマト由来のカロテノイド(主にリコピン)の摂取が、ハウスダストに対する特異IgE値を有意に低下させることを明らかにしたものです。

***引用ここまで***

 

実際、アレルギーの人で、身体のためにとトマトなどの生野菜を好んで食べる人もいます。

スギ花粉症をひどくする可能性のあるとされるトマトが花粉症んじょ症状を和らげるって、どういうことでしょうか?

 

スギ花粉症に人にとって、トマトは体にいいのでしょうか、悪いのでしょうか?

これは、両方正しいと思われる、というのが答です。

いい部分もあれば、悪い部分もある。

悪い部分が出るかどうかは、その人次第(花粉に対するIgEがトマトを認識するかどうか)で、個人差があるので一概には言えない、ということです。

 

 

 

スギ花粉症の人はトマトにどう接するべきか?

 

スギ花粉症の患者さんの数は、症状の軽い人も含めると日本国内の1000万人以上に及ぶと考えられています。

そんな中で、トマトを食べたら症状が悪化したという人の数、どのぐらいいらっしゃるのでしょう?

 

2002年に症例が報告されるまで、存在も知られていませんでした。

その後もネット上で情報としては出回っているものの、自分がそうであるなどのネット上でのつぶやきはあまり目にする機会がないように感じます。

スギ花粉症で悩んでいる人のごく一部でしか起こっていない症状ではないかと勝手に想像しています。

 

1280px-Spaghettata

“Spaghettata” by Dr.Conati – 投稿者自身による作品. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ – http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Spaghettata.JPG#mediaviewer/File:Spaghettata.JPG

 

では、スギ花粉症の人は積極的にトマトを食べるべきか、食べないべきか。

どうすればいいか?

 

私の結論は、以下の順番でトマトに接するというものです。

 

1.普通に生のトマトを少し食べてみる。

それで症状が悪くなるなら、トマトに対して反応する免疫グロブリンができているかもしれない。
何ともなければ、気にしないで食べていても普通の量ならとりあえず大丈夫。

 

2.生のトマトで駄目なら、加熱したトマトを食べてみる。

ビーフシチュー、ミートソースにウスターソースやケチャップなど、トマト入りの料理や調味料はたくさんあります。

幸い、スギ花粉と似ているトマトの成分は熱に不安定で、加熱すると壊れると考えられています。

ですから、加熱調理したトマトを食べている分にはまず大丈夫です。

もしも加熱したトマトやトマトの加工食品を食べても何らかのアレルギー症状が出るという場合は、医者に相談して、原因となる成分が何に含まれているのかを確認し、避けるようにするのが良いです。

 

3.リコピンなどのサプリメントは確認して使う

リコピンなどのトマト由来のサプリメントは、ほとんどの場合は加熱されています。

ですから、加熱したトマトで何ともない人ならまず大丈夫だと思います。

 

でも、生のトマトでアレルギー症状がすごく強い、加熱したトマトでも少し変な症状がある、という人の場合には、安心とは言い切れません。

サプリメント販売者、もしくは医師に相談の上で、使うべきかどうかを決めましょう。

 

トマトはさまざまな特性を持ち、食べても美味しい素晴らしい食材の一つだと思います。

(イタリア料理なんかトマト抜きでは考えられないですからね)

トマトを極端に怖がることなく、上に紹介したような三つのステップで確認しながら利用するようにしてみてください。

スポンサードリンク
LINEで送る
[`buzzurl` not found]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です