インフルエンザ感染とワクチン接種でギラン・バレーの確率高いのはどちら?

インフルエンザワクチンを接種してギラン・バレー症候群にかかるメカニズムについて、以前、書きました。

その記事に対して、

「インフルエンザに感染してギラン・バレー症候群になるのと、

ワクチンを打ってギラン・バレー症候群になるのはどっちがリスク高いんですか?」

という質問をメッセージでいただきました。
回答となる研究を紹介します。

 

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インフルエンザワクチンを打つとギラン・バレーの発症率は少し上がる

 

複数の症例報告の論文を見ると、「ワクチンを打つ群」の方が「ワクチンを打たない群」に比べて2倍程度に発症率が高いとされます。

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2009年の新型H1N1の流行の時にも、

ワクチンを打った群での方が10万人当たり1.92人の発症率、

ワクチンを打たなかった群では10万人当たり1.21人

というデータでした。

 

10万人当たり、0.7人ほど増える計算です。

http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/wk/mm59e0602.pdf

 

一方で、インフルエンザに感染した人では、ギランバレー症候群の発症率は、感染しなかった人に比べて16倍から18倍程度、高くなるとされます。

インフルエンザに感染した場合の方が、ワクチンを打つよりもずっと高い確率でギラン・バレー症候群を発症します。

 

つまり、ギラン・バレーの発症しやすさから考えればインフルエンザにかかる方がかからなかった人より10倍ほど高いのです。

でも、ワクチンを打つ方がギラン・バレー症候群になる確率はワクチン打ってない人より2倍ほど高いのです。

ワクチンを打たずにインフルエンザにかからなかった人が一番可能性は低いということですね。

 

では、

「その年、ワクチンを打たずにインフルエンザに感染してギラン・バレー症候群を発症するリスク」と、

「その年、インフルエンザワクチンを打って副作用でギラン・バレー症候群を発症するリスク」とでは、

どちらが高いのでしょうか?

 

 

 

インフルエンザがどのぐらい流行するかで、ワクチンを打つ方がいいか打たない方がいいか変わる

 

その問題の解決を目指してシミュレーションをした論文があります。

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Simulation Study of the Effect of Influenza and Influenza Vaccination on Risk of Acquiring Guillain-Barre Syndrome

http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/21/2/pdfs/13-1879.pdf

For a hypothetical 45-year-old woman and 75-year-old man, excess GBS risk for influenza vaccination versus no vaccination was -0.36/1 million vaccinations (95% credible interval -1.22% to 0.28) and -0.42/1 million vaccinations (95% credible interval, -3.68 to 2.44), respectively. These numbers represent a small absolute reduction in GBS risk with vaccination.

 

ここでは過去の複数の論文を合わせて、ある確率でインフルエンザの流行があった場合、

45歳女性、あるいは75歳男性がインフルエンザワクチンを接種した場合と接種しなかった場合に、ギラン・バレー症候群を発症する確率はどちらが高いのか?

という計算をしています。

 

インフルエンザ流行が平均的な年であれば、計算上の予測では

45歳女性であれば、100万人当たり0.36人少ないです。

75歳男性であれば、100万人当たり0.42人少ないです。

 

つまり、ワクチンを打った方がギラン・バレー症候群になる確率はわずかに低いようです。

しかしこの数字は、その季節のインフルエンザの流行率などで変化します。

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Under typical conditions (e.g. influenza incidence rates >5% and vaccine effectiveness >60%), vaccination reduced GBS risk.

 

インフルエンザの感染(発症)率が5%のとき、ワクチンの有効率が60%を超えれば、ワクチンを打った方がギラン・バレー症候群の発症予防には有効である。

インフルエンザの感染(発症)率が10%のとき、ワクチンの有効率が39%を超えれば、ワクチンを打った方がギラン・バレー症候群の発症予防には有効である。

などという計算になります。

 

ワクチンを打つ方がいいか、打たない方がいいかの判断は、その年にどのぐらいインフルエンザが流行るのかで左右されるのです。

 

 

 

インフルエンザにかかる人の数とワクチンの有効率はは毎年どのぐらい?

 

では、一般的に、インフルエンザの感染(発症)率は毎年どのぐらいなのか?

あるいは、平均的に、ワクチンの有効率というのはどのぐらいなのか?

 

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WHO(世界保健機構)の推定では、

The World Health Organization estimates that overall, 20%-30% of children and 5%-10% of adults are affected by influenza illness annually.

 

ざっくりくくると、毎冬、大人全体で5~10%はインフルエンザを発症するとされています。

子どもは毎冬20~30%、つまり4人に1人は発症するだろうという計算です。

当然ながら、子どもと住んでいる大人(親など)は子どもからもらう分、発症する確率が高くなります。

 

また、ワクチンの有効率は、国によって、その年によってずいぶん数値が異なります。

Although Canadian annual adjusted vaccine effectiveness estimates from 2005-06 to 2010-11 have ranged from 37% (95% CI 17%-52%) to 61% (95% CI 26%-79%), estimates were >45% for every season except 2010-11.
A recent study from the United States reported a vaccine effectiveness of 60%
(95% CI 53%-66%) for the 2010-11 season, for the 2011-12 season, a study from the United Kingdom reported a vaccine effectiveness of 23% (95% CI-10% to 47%).

 

カナダやアメリカの例で見ると、よく効く年は60%、平均すると45%ぐらいですけど、効かない年は23%なんてのがあります。

(有効率の計算の仕方が気になる人は、上に紹介した論文の関連文献から自分で調べてみてくださいね。)

 

日本での平均的なインフルエンザ発症率が毎年10%くらいで、ワクチンの有効率がおおむね40%くらい。

そう考えると、インフルエンザワクチンを接種した方が、ギラン・バレー症候群にかかる率はわずかに低くなる、ということでいいようです。

ですから、ギラン・バレー症候群が怖ければ、ワクチンを打つ方が安心、という結論になります。

 

 

 

ギラン・バレー症候群と診断されたことのある人はワクチンを受けない方がいい?

 

ただし、上の計算の中には「ギラン・バレー症候群を発症した人」は含まれていません。

経験的には、「ギラン・バレー症候群を発症した人」が再発する率は初めて発症する人の確率に比べると高いと考えられています。

(ただし、ギラン・バレー症候群を再発した人の数は少ないので、有意な統計データはないと思います、探しきれませんでした。)

 

私の個人的な意見

自分がギラン・バレー症候群の既往歴有で、一般的な職業の大人だったら、ワクチンは受けません。

でも、自分がインフルエンザに感染する確率の高い小児科や内科や耳鼻科の医療関係者や、小中学校の先生だったら、打ちます。

 

そういう、患者さんや子どもと頻繁に接するような場合でない限り、ワクチンを打たないで手洗いやマスクなどで予防に努める、ということでいいように思います。

ワクチンを打つメリットはごくわずかですし、そのわずかなメリットは「既往歴有」という部分で相殺されると考えます。

 

これはあくまでも、管理人の個人的な意見です。

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